休職を考え始めたとき、頭の中に浮かんだのは「傷病手当金」という言葉でした。
名前は知っていた。でも、実際にいくらもらえるのかは、まったく分かっていませんでした。
「月給の3分の2くらいもらえる」とは聞いていたけれど、それが本当なのか。自分の場合はいくらになるのか。そして、それで本当に生活できるのか。
この記事では、傷病手当金の計算方法を分かりやすく整理しながら、私が実際に経験して気づいた「知っておけばよかった落とし穴」もあわせてお伝えします。
制度の詳細な解説は各種公的機関のページをご参照いただき、この記事は「なんとなくの理解」から「自分の数字を持つ」ための補助として読んでいただければ幸いです。
※この記事は私個人の経験をもとにした情報提供であり、個別の状況に対する保証や助言ではありません。正確な金額は加入している健康保険組合や協会けんぽにご確認ください。
まず結論:傷病手当金は「月給の約3分の2」が目安
難しく考えなくても大丈夫です。
傷病手当金は、おおよそ「月給の約3分の2」が支給されます。
正確な計算式はあとで説明しますが、まずはこの数字を頭に入れておいてください。
「3分の2か、やっぱり厳しいな」と感じる方もいるかもしれません。
私もそう思っていました。でも、実際に振り込まれたとき、思っていたよりも多く感じました。その理由は、あとのセクションで詳しく書きます。
計算式を分解してみる
傷病手当金の1日あたりの支給額は、次の計算式で算出されます。
支給日額 = 標準報酬月額(直近12ヶ月の平均)÷ 30 × 2/3
「標準報酬月額」という言葉が聞き慣れないかもしれません。
ひとことで言うと、健康保険料の計算に使われている「月給のおおよその目安額」です。基本給や各種手当を合計した1ヶ月の報酬を、決められた等級表に当てはめた金額のことです。ボーナスは含まれません。
正確な金額は、給与明細や健康保険証などで確認できます。会社の経理・総務窓口に聞くのが一番確実です。
なお、健康保険の加入期間が12ヶ月未満の場合は計算方法が変わります。くわしくは後述します。
月収別・支給額の目安
実際の支給額のイメージをつかんでもらうために、月収別の目安をまとめました。
※あくまで概算です。実際の支給額は標準報酬月額の等級や各種条件によって変わります。
| 月収(目安) | 1日あたりの支給額(目安) | 30日あたりの支給額(目安) |
|---|---|---|
| 20万円 | 約4,440円 | 約13.3万円 |
| 25万円 | 約5,560円 | 約16.7万円 |
| 30万円 | 約6,670円 | 約20.0万円 |
| 35万円 | 約7,780円 | 約23.3万円 |
自分の月収に近い数字を見つけたら、「ひと月あたりこのくらいは確保できる」という感覚で覚えておいてください。
ちなみに支給されるのは「暦日ベース」です。土日・祝日も対象になります。週5日勤務の会社でも、休んでいた土日分も支給されます。
「思ったより多く感じた」理由
最初に振り込まれたとき、正直なところ「あれ、思ったより多いな」という感覚がありました。
月給の3分の2という数字を聞いていたのに、なぜそう感じたのか。
理由は、普段もらっている給料の仕組みにあります。
毎月受け取っている給料は、健康保険料・厚生年金保険料・所得税・住民税などが天引きされたあとの金額です。たとえば月給30万円でも、これらが引かれると手取りは23〜24万円程度になることが多いです。
一方、傷病手当金は非課税です。所得税も住民税も引かれません。計算した金額が、そのまま口座に振り込まれます。
月給30万円の場合、傷病手当金の目安は月約20万円。
普段の手取り(23万円)と比べると、差は約3万円。
「月給の3分の2」と聞くと大きく減るイメージがありますが、手取りベースで比較すると、意外と差は小さかったりします。
ただし、ここで安心しきるのは少し待ってほしいです。傷病手当金をもらいながら、自分で払わなければいけないものがあります。
落とし穴①:自分で払わなければいけないものがある
給料をもらっているとき、社会保険料や税金は会社が天引きして払ってくれています。
でも、傷病手当金をもらっている間は、それを自分で払う必要があります。
休職中(会社に在籍している期間)の場合
以下を、自分で会社に振り込む形になります。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 住民税
金額は人によって異なりますが、合計で月5〜8万円程度になることも珍しくありません。
傷病手当金が月20万円入ってきても、ここから5〜8万円が出ていく。このイメージを持っておくかどうかで、生活設計が大きく変わります。
退職後(無職になった場合)の場合
退職すると、加入先が変わります。
- 国民年金(月約1万6千円)
- 国民健康保険(前年の所得によって異なる)
こちらは自分で手続きして支払う形になります。退職のタイミングで切り替えが必要なので、忘れずに対応してください。
傷病手当金の金額だけを見て「これで生活できる」と判断すると、ここで想定外の出費が出てきます。事前に把握しておくだけで、心の準備がかなり違います。
落とし穴②:振り込まれるまでに1〜2ヶ月かかる
申請してすぐに振り込まれるわけではありません。
傷病手当金を受け取るには、申請書に医師の意見欄と事業主の証明欄を記入してもらい、健康保険組合に提出する必要があります。
この書類の準備・会社への依頼・審査という一連の流れに、1〜2ヶ月かかります。
その間、給料は止まっています。
私が初めて申請したとき、正直かなり不安でした。書類の書き方を間違えていたらどうしよう。不備があって差し戻されたら、さらに時間がかかる。そもそも、本当に振り込まれるのか。
「理論上はもらえるはずなのに、実際に振り込まれるまで信じられない」という感覚が、ずっと続きました。
口座を確認して「ちゃんと来た」と思ったときの安心感は、今でも覚えています。
この1〜2ヶ月の空白期間を乗り越えるために、休職前にある程度の貯えを確認しておくことをお勧めします。
補足:健康保険加入が12ヶ月未満の場合
転職して間もない方など、健康保険の加入期間が12ヶ月未満の場合は計算方法が異なります。
この場合、次の①②のうち低い方の金額を使って計算します。
- ① 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均
- ② 全被保険者の標準報酬月額の平均額(協会けんぽの場合、支給開始日が2025年4月1日以降は32万円)
入社して1〜2ヶ月でも計算自体は可能ですが、金額が変わる可能性があります。気になる方は加入している健康保険組合や会社の担当窓口に確認してみてください。
まとめ:まず自分の金額を計算してみよう
お金の不安は、数字を知るだけで半分くらい消えると思います。
「もしかしたらもらえないかもしれない」という漠然とした恐怖より、「月にこのくらいは入ってくる、ただしここは自分で払う必要がある」という現実の方が、ずっと扱いやすい。
休職を考えているなら、まず自分の傷病手当金の金額を計算してみてください。協会けんぽのサイトや、傷病手当金のシミュレーターで、おおよその金額はすぐに出せます。
「月にこのくらいは確保できる」という数字を一つ持つだけで、踏み出すときの怖さがだいぶ変わります。
傷病手当金の申請の流れや必要書類については、こちらの記事で詳しく書いています。あわせて読んでみてください。
私は休職・退職・転職を経験した立場から、職場のしんどさや働き方についての相談をCoconalaで受けています。もしよければプロフィールをのぞいてみてください。

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