休職している間、あるいは休職を考えている段階で、こんな言葉が頭をよぎることがあります。
休職しなければよかったのではないか。
私は適応障害で半年間休職し、結局その会社には復職せずに退職しました。傷病手当金は、退職をまたいで計8か月受け取っています。
その私が、いま正直に答えます。
休職したこと自体は、まったく後悔していません。ただ、後悔していることはあります。それは「休むと決めるのが遅すぎたこと」でした。
この記事では、私が実際に後悔したことと、後悔しなかったことを、なるべく正直に分けて書いていきます。
※本記事は私個人の体験と考えをまとめたものです。診断や治療、制度の判断については、必ず医師・お勤め先・加入している健康保険組合などの公式な窓口にご確認ください。
結論:休職したこと自体は、後悔していません
先に結論から書きます。
半年休んで、復職せずに辞めて、そのあと転職しました。いまは経理の仕事をしていて、残業はほとんどありません。
あのとき休んでいなければ、いまの状態にはたどり着けなかったと思います。
実は私は、休職して間もない頃にも同じことを書いています。当時の記録を読み返すと、こう残っていました。
「そんな自分が休職の決断をすることになるとは思ってなかった。ただ、これは結果的に良い判断だったと思う」
渦中にいた自分も、数年経った自分も、そこの評価は変わっていません。
ただし、これは「休職すれば必ずよくなる」という話ではありません。私の場合はこうだった、という一例です。そのうえで、後悔の中身を分解していきます。
「休職しなければよかった」と感じる後悔は、3つに分かれる
休職の後悔とひとことで言っても、中身はばらばらです。私が自分の経験と、当時調べていたことを振り返ると、だいたい次の3つに分かれます。
1. お金の後悔
収入が減る。傷病手当金がいつ振り込まれるか分からない。給与天引きがなくなったぶん、社会保険料や住民税の負担が見えにくくなる。
これは実際に起こります。私も後悔しました。詳しくは後述します。
2. キャリアと、戻りづらさの後悔
休職期間が空白になるのではないか。復職しても居場所がないのではないか。転職のときに不利になるのではないか。
休む前の私が一番おそれていたのは、ここでした。
3. 過ごし方の後悔
もっと有意義に過ごせばよかった。ただ寝ていただけで終わってしまった。
ただ、私はこれを後悔とは呼ばなくていいと思っています。休みはじめの時期に何もできないのは、回復の過程としてごく自然なことでした。
この3つのうち、私が本当に後悔したのは1つ目だけです。しかも、後悔したのはお金が減ったことではありませんでした。
私が後悔したこと①:制度を知らずに、振込を遅らせてしまった
私が実際に「これは失敗した」と思ったのは、傷病手当金の申請でつまずいたことです。
私は12月1日付けで退職しました。その退職月の分を申請するとき、在職していた期間について会社の証明欄が必要だということを知りませんでした。
知らないまま提出し、健康保険組合から差し戻されました。結果、その分の振込が遅れました。
お金が減ったわけではありません。最終的には受け取れています。それでも、収入が止まっている時期に入金が遅れるのは、想像以上に不安でした。
もうひとつ、見落としやすいのが社会保険料と住民税です。休職して給与の支払いが止まっても、これらの支払いは続きます。天引きされなくなるぶん、あとからまとめて請求される形になることもあります。
つまり、お金の後悔の正体は「休んだこと」ではなく、「知らなかったこと」でした。ここは休む前に調べておけば減らせる後悔です。
それぞれの詳細は、別の記事にまとめています。
私が後悔したこと②:休むと決めるのが、遅すぎた
ここが、この記事で一番書きたかったことです。
私が後悔しているのは、休職したことではありません。休むという判断を、何か月も先延ばしにしたことです。
気づけなかったのではなく、「休むほどではない」と判断し続けていた
当時を振り返って、いま一番はっきり言えるのはこれです。
私は、疲れに気づいていなかったのではありませんでした。「休憩するほどではない」と、そのつど判断していたのです。
仕事はぎりぎり回せていました。最低限のアウトプットは出せていました。同僚とは笑って会話していました。
周りから見れば、普通に働いているように見えたはずです。ほかでもない私自身が、そう判断していました。
そこには、自分の考え方のくせもありました。私は物事を極端に捉えやすいところがあって、選択肢が「動く」か「止まる」かの二つしかありませんでした。
間にあるはずの「少し手を緩める」が、選択肢として存在していなかったのです。
だから、こう考え続けました。
まだ止まるほどではない。つまり、まだ動ける。
この判断を何か月も繰り返しているうちに、限界は静かに準備されていきました。
サインは体調より先に、頭の働きに出ていた
もうひとつ、気づくのが遅れた理由があります。
私が想像していた限界のサインは、熱が出るとか、朝起きられないとか、そういう分かりやすいものでした。
でも実際に先に出たのは、頭の働きのほうでした。
- 慣れたルーティン業務でミスが増える
- 記憶力が落ちて、同じことを何度も確認する
- 情報の取りこぼしが増える
- 優先順位の判断ができず、タスクだけが積み上がる
- 人の言葉を必要以上に深読みしてしまう
- 夜になると、頭の中で一人反省会が止まらない
脳の一部が切り取られて機能停止しているような、自分の頭で考えられず、ただ状況に反応するしかできないような感覚でした。
それでも出勤はできていました。だから私は、この状態を「調子が悪い時期」「環境が変わったから仕方ない」と解釈していました。
この期間が、私にとって唯一の後悔です。もっと早く休んでいれば、回復にかかった時間も、失ったものも、もう少し少なかったはずだと思っています。
会社に休職を切り出せずにいた時期のことは、別の記事に詳しく書いています。
逆に、後悔しなかったこと
休む前に一番おそれていたのは、お金とキャリアでした。結果から言うと、どちらも思っていたほどではありませんでした。
お金は、想像していたほど崩れなかった
傷病手当金を、退職をまたいで計8か月受け取りました。振込が遅れた時期はありましたが、生活が立ち行かなくなることはありませんでした。
収入が減るのは事実です。ただ、制度をひととおり把握しておけば、見通しは立てられます。見通しが立つと、お金の不安はかなり小さくなります。
休職歴があっても、転職はできた
転職活動は、順調ではありませんでした。未経験の職種で10件ほど応募して、書類はすべて落ちました。
そのあと他の職種にも20〜30件応募し、最終的に希望していた職種の1社に採用されました。面接では、休職して退職したことを正直に伝えています。
隠さなかったことで、入社後に配慮してもらえた場面もありました。
もちろん、誰にでも同じ結果になるとは限りません。それでも、休職歴があるから終わりだ、ということはありませんでした。
休んでよかったと思えたのは、止まらないとできない作業があったから
ここまで読んで、こう思う方もいるかもしれません。環境を変えたからよくなったのであって、休職そのものは関係なかったのではないか、と。
私も少し前まで、そう説明していました。でも、いま振り返ると、それだけではなかったと思っています。
休職中、私はいろいろなことを考えました。安定とは何なのか。どこでも通用する力とは何なのか。
そうしているうちに気づいたことがあります。
やっていること自体は、休職の前とあまり変わっていませんでした。変わったのは、考える順番だけでした。
以前の私は、まず会社をどうするかから考えていました。合わせるか、離れるか。それを決めてから、自分の生活をそこに当てはめていた。
いまは、自分がどうしたいかを先に置いて、そのあとで会社の位置を決めています。
同じ会社員という形なのに、出発点が逆になりました。
そして、この順番を入れ替える作業は、働きながらではできませんでした。止まっていた時間があったから、できたことでした。
私が休職を後悔していない理由は、たぶんここにあります。何か新しいものを手に入れたからではなく、手持ちのものを並べ直す時間が取れたからです。
ついでに言うと、休職中は選択肢そのものが増えました。休む前の私は「復職か、退職か」の二択しか見えていませんでした。でも実際には、同じ会社の別の部署に戻る道もあれば、将来の選択肢を増やすために移るという考え方もありました。
その枝が見えたのは、頑張って考えたからではありません。時間ができて、一人で抱え込まずに人に話せたからでした。
いま、休職するか迷っている人へ
もし休職を迷っている段階でこの記事を読んでいるなら、私の経験から言えることは3つです。
1. 「まだ休むほどじゃない」という判断を、一度疑ってみる
私はその判断を何か月も繰り返して、限界を超えました。動けているかどうかは、休むかどうかの基準にはなりませんでした。
2. お金の見通しを、休む前に一度だけ書き出しておく
受け取れるものと、出ていくものを並べておくだけで、後悔はかなり減ります。私が後悔したのは、これをやらなかったからです。
3. 復職か退職かを、いま決めようとしない
休みはじめの時期は、一番冷静に考えられない時期でもあります。そこで大きな判断をしなくていいと、私は思っています。
そして、体調そのものについては、私ではなく医師に相談してください。休職するかどうかの入り口については、こちらにまとめています。
まとめ
休職しなければよかったのか。私の答えをもう一度書きます。
- 休職したこと自体は、後悔していない
- 後悔したのは、制度を知らずに振込を遅らせたこと
- もっと後悔しているのは、休むと決めるのが遅すぎたこと
- お金もキャリアも、おそれていたほどではなかった
- 休んでよかったのは、止まらないとできない作業があったから
いま「休職しなければよかった」と感じているなら、その後悔がどこに向いているのかを、一度分けてみてください。
休んだこと自体への後悔なのか。準備が足りなかったことへの後悔なのか。それとも、これからどうするかが見えないことへの不安なのか。
分けてみると、手のつけられるものが残っていることがあります。
一人で考えるのがしんどいときは
とはいえ、こういうことは一人で考え続けると、同じところをぐるぐる回ってしまいます。私もそうでした。
私が二択から抜け出せたのは、時間ができたことと、人に話せたことの両方があったからでした。
ココナラで、職場のしんどさや休職についての相談を受けています。休職を経験した一人として、答えを出すためではなく、状況を一緒に整理するためにお話を聞いています。
もう少し自分のペースで理解を深めたい、という方には、私がこれまでの経験をまとめた本もあります。

※本記事は、私自身の体験にもとづく個人的な記録です。医学的な診断・治療方針については医師の判断が優先されます。体調に不安がある場合は、早めに医療機関へご相談ください。
※傷病手当金・社会保険料・住民税・休職制度の取り扱いは、加入している健康保険組合やお勤め先の就業規則によって異なります。実際の手続きや金額については、健康保険組合・年金事務所・会社の担当部署など、公式な窓口で必ずご確認ください。本記事は法的・専門的な助言を行うものではありません。


