HSS型HSPがキャパオーバーする本当の理由|限界に気づけないまま休職した私の話

HSS型HSEと生きること

HSS型HSPのキャパオーバーについて調べていると、たいてい「刺激を求めるのに刺激に弱いから」という説明にたどり着きます。それは間違っていないと思います。ただ、私自身の経験から言うと、本当にしんどかったのはそこではありませんでした。

キャパオーバーの怖さは、限界を超えることそのものではなく、限界を示すメーターが読めなくなることにあります。私はメーターが読めないまま走り続け、最終的に適応障害と診断されて半年間休職しました。

この記事では、なぜキャパオーバーするのかではなく、なぜキャパオーバーに気づけないのかを構造で整理します。そのうえで、私がいま実際にやっている減速の方法を4つ書きます。

先に、私の立ち位置を正直に書いておきます

私はHSS型HSPではなく、外向型のHSS型HSEです。刺激に敏感で疲れやすい繊細さ(HSPの性質)は持っている一方で、人と関わること自体は好きで、一人の時間を求めるタイプではありません。

なぜこれを最初に書くかというと、キャパオーバーの記事の多くが「一人の時間を確保しましょう」で終わるからです。私にはそれが効きませんでした。効かないまま走り続けて、倒れました。

だからこの記事は、内向型のHSS型HSPの方にとって、そのまま当てはまらない部分があるはずです。ただキャパオーバーが起きる仕組みそのものは、ほぼ共通していると感じています。同じ落とし穴に落ちた人間の記録として読んでいただければと思います。

HSS型HSEという言葉については、HSS型HSEとは何かで詳しく書いています。

キャパオーバーは、頑張りすぎたから起きるのではない

「キャパオーバーする人は頑張りすぎ」とよく言われます。ですが私は、頑張っている自覚すらありませんでした。

HSS(刺激追求)とHSP(繊細さ)が同居していると、アクセルとブレーキが同時に踏まれた状態になります。刺激を求めて前に出る力と、その刺激で消耗する体。この2つが同じ人の中で動いているので、消耗しながら、動けてしまうんです。

動けている限り、人は自分を「大丈夫」と判断します。ここがキャパオーバーの入口でした。

私がキャパオーバーに気づけなかった3つの仕組み

休職したあと、なぜ気づけなかったのかを自分なりに整理しました。3つの仕組みが重なっていたと思っています。

① 疲れていても行動できてしまう

新しいこと、変化、期待される場面。こういう刺激があると、疲れていても一時的にアクセルが踏まれます。私はこれを興奮モードと呼んでいます。

さらに、締め切り、トラブル、プレッシャー。非常事態に近づくほど出力が上がる感覚もありました。こちらは非常モードです。

慌ただしい職場では、この2つが常に発動し続けます。回復する時間がないまま、疲弊だけが積み上がっていきました。動けているのに、削られている。この状態が一番危険でした。

② 自分の疲れを感じ取れない

感受性が高いのだから自分の疲労にも敏感なはずだ、と思われるかもしれません。実際は逆でした。

感受性は、外側に向かって使われていたんです。周囲の空気、他人の感情、期待、役割、目の前の状況。こうした外部の情報を無意識に拾い続けているぶん、今の自分がどう感じているかという内側の感覚が、後回しになる

違和感はありました。でも動けてしまうので、「今は忙しい時期だから」「みんな疲れているのだから」と曖昧に処理して、見て見ぬふりをしていました。

③ 赤信号が見えても、減速の判断が遅れる

車を運転していて赤信号が見えれば、自然と減速します。ところが疲弊して判断力が落ちた私は、赤信号の手前でアクセルを踏み込んでいました。

  • もっと動かないと迷惑をかける(責任感)
  • みんな大変な中でやっている(外向きの感受性)
  • これは自分にしかできない(興奮モード)
  • 今だけは踏ん張らないと(非常モード)

そして最後にこう考えます。まだ動けている、なんとか仕事は回せている、と。

私のキャパオーバーのサインは、体調不良ではなかった

キャパオーバーの限界サインとして紹介されるのは、たいてい頭痛や倦怠感、肌荒れといった体の症状です。私にも倦怠感はありました。ただ、先に壊れたのは頭の方でした

  • 慣れたルーティン業務でミスが増える
  • 記憶力が落ちて、同じことを何度も確認する
  • 情報の取りこぼしが増える
  • 簡単な判断すら時間がかかり、優先順位がつけられない
  • 人の言葉を必要以上に深読みして疑心暗鬼になる
  • 夜になると、頭の中の一人反省会が止まらない

脳の一部が機能停止しているような感覚でした。自分の頭で考えられず、ただ状況に反応するしかできない。それでも出勤はできていましたし、同僚と笑って会話もできていました。

だから誰も気づかないし、何より私自身が気づけなかったんです。限界のサインについては会社をやめたいと思ったときの限界のサインでも詳しく書いています。

「まだ止まるほどじゃない」が、キャパを超えさせる

ここが、私にとって一番大きな発見でした。

私にはゼロ百思考(白黒思考)の癖があります。物事を、動くか止まるかの二択で考えてしまう。減速するという中間の選択肢が、そもそも頭の中に存在していなかったんです。

だから当時の私は、疲れに気づかなかったのではありません。気づいたうえで「休むほどではない」と判断していた。この違いは大きいと思います。

止まるほどではない、イコール、まだ動ける。そう変換して、アクセルを踏み直す。これを何か月も繰り返した先に、突然の急ブレーキとして休職がありました。

キャパオーバーは、キャパを超えた瞬間に起きるのではなく、「まだ超えていない」と判断し続けた時間の中で、静かに準備されていくのだと思います。

キャパオーバーを繰り返さないために、私がやっている4つのこと

① 減速するという選択肢を、先に持っておく

まず、動くか止まるかの二択から抜けることです。手を緩めるという選択肢が存在すると、自分にあらかじめ入力しておく。これだけで「休むほどではない」という判断の出番が減りました。

② 常に、赤信号かもしれないと疑う

疲れを感じ取れない性質は、たぶん変えられません。なので変えようとせず、受け入れて対策する方向にしました。

具体的には、疲労感がないときでも「自分が感じている以上に疲れているのでは」と疑ってみる。すると、少し休憩を入れようか、という選択肢を思い出せるようになりました。

③ 疲れを感じていなくても休む

当たり前のことを書いていると自分でも思います。ですが私は、この休憩を甘く見た結果、破綻しました。

いまは半ば強制的に休憩を入れます。休むほどではないと感じたとしても、です。自分の感覚を信頼しないという前提で仕組みを作る。痛い目を見たからこそ、これは続けられています。

④ 自動でアクセルが踏まれる環境から離れる

そして、これが一番効きました。私が消耗していた職場には、共通した特徴がありました。

  • 組織体制の変更や人の入れ替わりが激しい
  • タスクの優先順位が日々入れ替わる
  • 役割や担当範囲、評価軸が曖昧
  • トラブルの発生が日常茶飯事
  • 気を抜ける時間がほとんどない

刺激と緊張と曖昧さが同時に存在する環境です。ここにいる限り、興奮モードと非常モードが勝手に発動し続けます。意志で止められるものではありませんでした。

いまの私は経理職で、残業はほぼありません。同じ性質のまま、消耗しなくなりました。環境の話はHSS型HSEに向いている仕事・向いていない仕事に詳しく書いています。

「一人の時間を作る」が効かない人もいる

キャパオーバーの対処法として、一人の時間を確保する、という方法がよく挙げられます。内向型のHSS型HSPの方には、これが効くのだろうと思います。

ただ、私のような外向型は、一人になっても回復しません。むしろ手持ち無沙汰になって、また次の刺激を探しに行ってしまう。休んでいるつもりで、アクセルを踏んでいるんです。

大事なのは一人になることではなく、刺激の量を減らすことでした。人といてもいい。ただ、情報と緊張が少ない場所にいる。ここを取り違えていたので、私は長いあいだ回復できませんでした。

回復の具体的な方法はHSS型HSEが疲れたときの回復法にまとめています。

キャパオーバーは、意志の問題ではなかった

私は長いあいだ、環境に適応できない自分が悪いのだと思っていました。もっと割り切ろう、気にしないようにしよう、強くなろう。そうやって自分を変えようとしていました。

いま振り返ると、それは相性の悪い環境に、無理やり自分を合わせようとしていただけだったと思います。

キャパオーバーしやすいのは、意志が弱いからでも、能力が足りないからでもありません。アクセルが踏まれやすい性質の人が、アクセルを踏ませ続ける環境にいた。それだけのことでした。

当時の私は、自分が繊細な気質を持っていることを知りませんでした。だから、非HSPの上司や同僚と同じ土俵で張り合う必要があると思い込んでいたんです。その思い込みを外せたことが、休職から得た一番大きなものでした。

もし、いま自分がキャパオーバーしているのかどうかも分からない状態にいるなら、それは気づけていないだけかもしれません。私がそうでした。HSS型HSEあるあるや、適応障害で休職することになったらも、判断の材料になれば嬉しいです。

ひとりで抱えているなら、話してみませんか

キャパオーバーの苦しさは、外から見えにくいぶん、誰にも分かってもらえないという孤独とセットになりがちです。私もそうでした。

ココナラで、休職や職場のしんどさについての相談を受けています。答えを出すというより、まず言葉にしてみる場所として使っていただければと思います。

ココナラのページを見てみる

もう少し自分のペースで理解を深めたい、という方には、私がこれまでの経験をまとめた本もあります。

「繊細さんじゃないはずなのに」なぜか生きづらい人へ(Kindle)
それ、HSPじゃなくてHSS型HSEかも。好奇心の強さと刺激への弱さの矛盾した感覚には、ちゃんと理由があった

※HSP・HSS型HSP・HSS型HSEは、いずれも医学的な診断名ではなく、気質を説明するための概念です。この記事は私個人の経験に基づくもので、医療的な助言を目的としたものではありません。心身の不調が続く場合は、医療機関にご相談ください。

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